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不思議な競馬となったエクリプスS

  • 2007年07月10日(火) 23時50分
 昨年の欧州マイル王者ジョージワシントンと、今年の英国ダービーを圧勝したオーソライズドの直接対決が実現し、大きな話題を集めたG1エクリプスS。7月7日にサンダウン競馬場で行われた距離10FのG1戦は、とても不思議な展開となり、予想外の結末を迎えた。

 レース前半は、オーソライズドの陣営が用意したペースメーカーのチャンペリーが、後続を大きく引き離して忠実に任務を遂行。単勝1.57倍の圧倒的1番人気に推されたオーソライズド、単勝5倍の2番人気だったジョージワシントンは、馬群の一番後ろで馬体を併せる展開となった。オーソライズドの鞍上デトーリ、ジョージワシントンの鞍上ヘファーナンとも、最強のライバルを充分に意識した乗り方だったのは明らかだったし、前半のペースからしてゴール前は2頭の鍔迫り合いになるものと、見ていた多くのファンは思っていた。

 そして、それは半ば的中した。ゴール前、オーソライズドとジョージワシントンの壮絶な競り合いが内ラチ沿いで展開され、オーソライズドが欧州競馬界の若き盟主らしい勇気を見せてジョージワシントンを頭差斥け、見事古馬との初対決を制した…ように見えた。

 ところがこの時、2頭とはかなり離れた所で、予想外のこと起きていた。

 逃げていたチャンペリーが後退し、各馬が直線に入った時である。馬群が内ラチ沿いに進路をとった中、ライアン・ムーアが手綱をとる3番人気のノットナウケイトが、糸の切れた凧のように外に進路をとり、1頭だけ外ラチ沿いに単独行になったのだ。

 例えば道悪になった時など、各馬が外ラチ沿いに進路をとる中、重馬場得意な馬が1頭だけ馬群を離れて内ラチ沿いに進路をとることはあるが、1頭だけわざわざ大外に持っていくというのは、なかなか見られる展開ではない。ノットナウケイトとて、昨年のインターナショナルS、この春のタタソールズGCと、この路線のG1を2つ持って行っている強豪だが、1、2番人気が内ラチ沿いで競り合っていたゆえ、その存在に注目したファンはほとんど居なかったと言っても過言ではなかった。

 内外大きく離れている場合、実際にどちらが先行しているのか、騎乗している騎手たちにもわからないことがあるそうだ。ましてやオーソライズドの鞍上デトーリも、ジョージワシントンの鞍上ヘファーナンも、当面の敵に先んじることに必至で、遥か彼方を進むノットナウケイトの存在は完全にノーマークだったはずだ。

 しかして、外ラチ沿いでノットナウケイトがゴールに飛び込んだ時、内ラチ沿いのオーソライズドとジョージワシントンは1.1/2馬身も後方にいたのである。レース前にコースを歩き、外ラチ沿いの馬場が非常に良いことを確認して大胆な騎乗を敢行した、ライアン・ムーアの大手柄であった。

 これで3つ目のG1を手にしたノットナウケイト。次走は連覇を目指すヨークのインターナショナルSに向かう予定だ。

 一方、敗戦を喫したオーソライズド。決して馬の評価が下がる敗戦ではなく、次走は当初の計画通り、アスコットのキングジョージになる予定だ。

 僅差の3着に敗れたジョージワシントンは、このまま10F路線を行く可能性が高く、秋はレパーズタウンの愛チャンピオンSが目標になりそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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